※ネタバレあります。ご注意ください。
あらすじ
槙生は朝と荷物整理をしに行った時、姉が朝に宛てた日記を見つけていた。
朝が20歳になった時に渡すと決めていると書かれている日記は、朝の名前の由来から始まっていた。
ある日、朝が祖母の家に行かないのかと槙生に聞いた。
母とよく行っていたようで、槙生は5年以上ぶりに朝と祖母の家に行くことに。
朝を見た瞬間に甘々になる祖母だが、槙生に対しては”槙生の母”の姿があった。
自室の荷物整理をしていた槙生は、姉に借りた本を見つけたため一応返そうと姉の部屋に向かう。
祖母とお茶をしていた朝は、槙生を手伝ってくると槙生の部屋を覗く。
しかし姿がなかったため母の部屋を覗いた。
そこには母と同じようにベットに座って外を眺めている槙生の姿があった。
一瞬母の姿が重なり驚く朝。
朝はベットに座り込んでいる時の母は朝の知らない母の姿で、気が付いてもらえるまで話しかけられなかったという。
いつになっても、母親が自分の知らない顔をしているときの恐怖は誰もが思う普遍的なもの。
朝の祖母、槙生の母は昔は鋭敏な人だったが、いつからか鈍くずるい人に変わってしまった。
“姉は気配りができて、槙生は自立している”
それがいつしか
“姉は自立性がないし、槙生は薄情だ”
に変わっていた
槙生は姉の遺体確認を母が朝に頼んだことを怒っていた。
朝は母がどんな人なのか、何を考えていたのかを知りたくて部屋にやってきた。
しかし、それは生きてたって分かりようがない。
誰にも分からないのだ。
感想
昔は仲の良かった二人。
それがいつしか姉は槙生のことを憎くむようになった。
そして槙生は姉への憎しみなしに小説家になれていたのか。
いい意味でも悪い意味でも自分の人生の形は家族の影響が強い。
同じ血が通っていても、全く違うから不思議ですよね。
祖母はどれだけ鈍くずるい人に変わったとしてもやはり槙生の母です。
自分のことで精一杯で人の話を聞く余裕がない槙生のことをよく分かっています。
祖母は姉の母である顔があり、槙生の母である顔がある。
子どもの前では母ですが、同級生に会えば母ではなくなる訳で。
人によって見せる顔が違うのは当然と言えば当然なのですが、自分が見たことない姿をした両親や兄弟を見ると驚きますね。
大切にされていた朝は、好かれることに抵抗がなくとても素直です。
思ったことは何でも口にしてしまいます。
そこには悪気も悪意もないのですが、考えなしに思ったことを口にするのはとても危険。
朝は親友えみりの友人に対し、”可愛い顔しているから悩みなんて絶対ない”という話題に便乗してしまう。
その友人は後で泣いていた。
そして、貧血気味で頭が働かない槙生が数時間で泥棒が入ったかのような散らかった部屋にしてしまったことにたいし、どうしてそんなこともできないのかと大声をあげます。
朝としては怒っていたわけではないし、”ふつう”ならと思うことが槙生には出来ないことが不思議でならないだけ。
しかし、何に対して傷つくのかは朝が決めるのではなく、言われた側が決めること。
これは大人になった今でも難しいです。
“ふつう”という言葉は、本当に使っていいものではないですよね。
この言葉を使った時点で差別していることになる。
でも世の中はふつうのオンパレード。
自分が正しいとみんなどこかで思っているんです。
えみりが槙生にどうして結婚していないのかと突然に大きな質問をしてきます。
親からいつかは結婚するんだからと言われ、結婚したくないわけではないけど、自分だけ違うと何か引っかかっている様子。
えみりの母も結婚しなかったら仕事を続けたかった人だとか。
えみりもえみりの母も何か抱えていますね。
笠町とご飯を食べている最中、槙生はえみりと笠町についてまだ好きなのかもと恋バナをしていたせいで笠町にむらむらしてしまいます。
一度失望させて、今も友達である笠町にどの面さげてむらむらしているのかとぐるぐる悩みはじめます。
そんな槙生に対し、頼ってほしいと思っている笠町。
愛ですね、愛。
人に助けてもらう価値がないと、なんと卑屈なことを思う槙生。
大切にしたい相手自身が自分を大切にしていないのはとても哀しい。
最後は笠町に乗せられてしまう槙生でした。
考えなさすぎもよくないですが、考えすぎもよくないです。
適度が全く分かりませんが、うまく生きていきたいものだと考えてしまいました。
この漫画を読むとあれこれと深く考えてしまいます。