感想『かきかけとけしいん』たし 

ヒューマンドラマ

※ネタバレあります。ご注意ください。

あらすじ

母親に捨てられた少年いのは叔母の家に預けられていたが、娘が帰ってくるからと叔母の甥ろくというおじさんの家に預けられることになった。

ろくは不愛想な男性だった。

ろくの家に着くなり叔母はそそくさと帰ってしまいすぐにろくと二人きりになってしまう。

物怖じせずにずけずけと喋るいのに対し、ろくは”子どもが嫌いだ”と言い切る。

夕食にするから手を洗ってきなさいと台所へ行ってしまったろくに対し、いのはムカついたので玄関先で泣いてみせた。

いつもなら自分が泣けば誰かがすぐに駆け寄ってくるのだがろくは全く側にやって来ず、それどころか一人で夕食を済ませてしまったのだ。

いのは子どもを放置するとはどういうことかと驚く。

泣くのも疲れお腹もすいたのでこっそりと台所へ向かい、食事にありつこうとするいの。

すぐにろくに見つかり、呆れたようなため息をつかれる。

その態度に怒ったいのは、なぜ意地悪するのかと叫んだ。

しかしろくは手は洗ったのかと尋ねるだけ。

怒っていたいのだったが、ろくの淡々とした様子に拍子抜けしてしまう。

かわいくない子どもとかわいくない大人の二人暮らしがはじまる。

登場人物

 ・いの

  主人公の男の子。小学4年生。

 ・ろく

  いのを預かることになった青年。年齢不明

感想

2010年に発売された漫画で、高校生の頃に何回も読んでいました。

『違国日記』、『の、ような。』という漫画も好きでよく読みますが、子どもを引き取る大人の職業がどの作品も物書きです。

3つの作品の中でろくが一番人間らしい生活をしています。

『ひるとよるのおいしい時間』という漫画も同じように物書きですが、彼女が一番人間から離れた生活をしているように思えます。

なんにしてもどの作品もいい話ばかりで何度も読んでしまいます。

昔からこういう作品が好きな私です。

 

本当にかわいげのない子どもである、いの。

今まで好き勝手わがままばかり、学校にも行っていなかったのですが、今までのようなわがままはろくには全く通用しません。

ろくは子どもだけでなく、近所の大人にさえ愛想笑いをしない。

そんなろくに対して取り繕う必要がないのだと分かったいのは、次第に素直になっていきます。

そして、今まで自分の居場所がない、誰も必要としてくれていないと感じていたさみしい心が少しずつ温かくなっていきます。

学校に行きたくないといういのに、仕事として家事をやらせるろく。

無理に学校へ行かせるようなことはせず、他の子どもが勉強している間に遊んでいるだけの子どもがご飯にありつけるなんて馬鹿な話はないということで家事をさせています。

ろくが学校は集団生活についても学ぶ場所だと教えていますが、ろくを見る限り学んでいたのかは定かではないですね。

愛想笑いしないろくにはいのに教えられるほどの集団生活を学んだ成果が見られません。

いや、もしかしたら、学んだ成果が今のろくなのかもしれない。

何も周りに合わせるだけが正解ではないですからね。

周りに合わせるのも、集団から外れるのも、自分が良しとすればそれでいいんです。

自分の行動によって周りがどう反応するのかさえ分かれば、大人になってから戸惑うことはないですからね。

スーパーでの買い物で余った金でお菓子を買ってもいいと言われたが、まったくお金が余らず怒りながら帰ってきたいの。

買い物には算数が必要になる。

学校に行かなくても日常生活である程度の国語と算数を学ぶことは出来ます。

お小遣い欲しさに、手紙を出してきてほしいとろくから頼まれごとを引き受けます。

夕食を作ることに夢中になり手紙を出し忘れたいの。

いのは言い訳のように”こんな”手紙なんていつでも出せると言ってしまいます。

“こんな”手紙よりも夕食を作った自分を褒めてほしかったのですが、ろくは”こんな”という言葉に怒りを表します。

それに逆切れしたいのは手紙を直接渡しに行き、そこで自分がろくの一番になれないという事実を突きつけられる。

自分を一番に思ってくれているとどこかで思っていたのですが、ろくには自分よりも大切な人がいることに心がざわめきます。

家に帰ることが出来ず夜通し公園で過ごし、どこかへ行ってしまおうと考えます。

翌朝、お金を取りに帰るため、一度ろくの家に戻ります。

玄関を開けると、そこには座り込んでいるろくがいました。

いのを見ると、ろくはどれだけ心配かければ気が済むんだと大声で怒ります。

いのはちゃんとろくに大事にされていたのです。

ろくは膝をついて、お腹はすいていないか、夜はどこで過ごしていたのかとぎこちなくいのを抱きしめます。

自分のことしか考えず、自分は本当に子どもだったと分かったいの。

いのは大人になりたいと学校に行くようになります。

 

親のせい、みんながいうから、

人にせいにばかりして自分はなにもしない

それではとても面白くない

親がどうであれ、他人がどうであれ

周りの環境もとても大切ですが

自分に目を逸らさず、自分で探しにいかないと変われないんです

 

いのとろくの成長の物語です。

 

久しぶり読みましたが、やっぱりいい話でした。

 

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