※ネタバレあります。ご注意ください。
あらすじ
高校の入学式、朝が一人で行くというので槙生はついて行かなかった。
親友えみりの母に、入学式に同席しないのは可笑しい、今からでも槙生に連絡をと朝に説得するが、「親じゃないし」と朝は自分の席に行ってしまう。
初めて出会ったクラスメイト達に対し、朝は非凡だと思われたくて自分の両親が亡くなっていて今は小説家の叔母の家に住んでいると話す。
しかし、何か間違えたと感じて急に恥ずかしくなった朝。家に帰り、槙生にそのことを話すと「へー」という予想していなかった反応が返ってきた。
母がいつも何か言ってくれていただけに、自分の行いを誰にも叱られることもなく、助言もない状況に朝は次第に混乱し始める。
部活決め、髪を染める、自分の母なら「やめときなさい」という行いを、自分で決められる。
勝手に死んでしまった親に対し静かに怒りを感じはじめた朝は、反抗心から30万のパソコンを買って軽音部に入ろうする。
槙生は軽音部に入ることを反対していないし、反対する母はもういない。
しかし「大人だから反対する」と思っている朝は、軽音部に入ることを反対されないためにパソコンを買ってしまった。
朝は両親が亡くなってから、ずっとさみしかった。
ぽつーんと砂漠の中に一人でいる感覚。
槙生はそのさみしさを受け入れてくれたが理解してはくれなかった。
感想
”無条件でなにかしてくれる人”
親とはそういう存在。
私も親には沢山いろんなことを相談してきたし、今もしてます。
そういう存在が急にいなくなった時、何を頼りに生きていけばいいのでしょう。
大人なら問題ないですが、朝はまだ15歳です。
道を示してくれる母がいなくなった朝の足元はぐらぐらで、気持ちもぐしゃぐしゃになります。
「勝手に死んじゃったほうが悪い」と両親に怒りを感じても、その両親はもういない。
槙生にはその気持ちを理解できない。朝が時間をかけて受け入れていくしかないのです。
家にえみりが来た時、槙生は「私の家ではなくなってしまった」と苦しくなります。
槙生の仕事中、えみりが帰ると声をかける朝に槙生は「うるさい」と返します。
槙生は怒っていたわけではないのですが朝はその言葉に怒りを感じます。
やり返そうと同じように「うるさい!」と槙生に怒るのですが、槙生は「あ、そう」と言うだけ。
思っていた反応が返ってこないので朝はもう訳が分からない様子です。
槙生は一人でしか仕事ができない。人といるととても疲れる。
一人でいることをさみしいと思わない槙生には、朝のさみしさは理解できない。
同じように朝には、槙生の息苦しさを理解できない。
それは別の人間だから。
分かり合えないからこそ歩み寄らないといけない。
大人になって社会に出てからも、自分とは全く違う考え方の人と沢山出会います。
相手を理解できなくても、こういう人もいるのだと歩み寄らないといけないですよね。
自分の考え方だけで人の良い悪いの判断はできません。
それにしても槙生の伝え方はとても難しいですね。本当に上辺でも共感することを全くしない。
15歳に対しての説明ではないとは思いますが、槙生らしい伝え方です。
わたしだけが ひとりで
わたしだけが 誰からも愛されなく
わたしだけが ほんとうの恋を知らず
わたしだけが と わたしたちの 多分 誰もが思っていた
この言葉。とても共感してしまいました。
15歳。高校一年生。
一人である程度行動できるようになれるけど、やはり親が必要な時期。
感傷的になってしまう年頃です。
この多感な時期をどう過ごすかは本当に大切です。
笠町が家にやってきて、ソファで朝、槙生、笠町と三人ならんでテレビを見る。
自分一人ではなく、誰かと同じものを共有する。
朝は両親が亡くなって以来、初めて孤独を感じずに眠りにつけました。
朝の気持ちが中心になっている3巻。
今回も色んなことを考えてしまいました。
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