感想『とつくにの少女』ながべ 10巻

ダークファンタジー



※ネタバレあります。ご注意ください。

あらすじ

せんせが目を覚ますと胸のあたりにひとりでに動くものがあり、自身の手の中にロケットペンダントがあった。

シーヴァに渡したはずのそれをなぜか自分が持っている。

シーヴァを探して何度も呼んでいると、森の中で見たことのない外の者の姿があった。

どこかへ行こうとするその外の者は花を持っていた。以前にシーヴァが作ってくれた花の冠と同じ花を持つ外の者を追いかける。

意識が飛んで倒れてしまったせんせが再び目を覚ますと、外の者は少し離れた場所からこちらを見ていた。

せんせの周りにいた他の外の者達が、あの外の者がシーヴァと言われていた子だと教える。

せんせはどこかへ行ってしまう外の者を追いかけた。

シーヴァだった外の者は身体に残る残骸が勝手に動くのだと言う。

どこへ行くのかとせんせが尋ねても外の者は分からないと答えるので、せんせは家に帰ろうと手を差し伸べた。

一人で上手く歩けないせんせの手を引くシーヴァだった外の者。

外の者はどうして魂を私に返したのかとせんせに尋ねた。

せんせはシーヴァが外の者になり自分と同じ思いをしてほしくなったのだ。

しかし、外の者が聞きたかったことはそういうことではなかった。

感想

7年ほど前の内つ国の中心地で起きた大粛清。

そこで医者であったアルベルトは妻と子どもと逃げようとするも兵に殺されてしまう。

森に捨てられたアルベルトに外の者が近づきます。

その外の者はアルベルトから魂を奪い、自分の身体の一部をアルベルトに与えました。

アルベルトは内の者が呪われた果ての姿である化け物ではなく他の外の者と同じような黒の子となりました。

そしてアルベルトから魂を奪った外の者は疑似的に内の者と同じ姿となり創りなおされ赤子となり、シーヴァとして約7年生きてきた。

 

せんせが外の者となってから7年、シーヴァと出会うまで本当に辛い時間を過ごしてきたんです。

化け物の姿になってすぐの頃に優しくしてくれた老人と子どもは、せんせを匿ったことで殺されてしまいます。

自分がどういう存在か思い知ったせんせ。

どうやっても死ねない体で、人間だった記憶がどんどんなくなっていく。

大切なことがあったはずなのに、それがなにか思い出すことができない苦しみ。

せんせはどれだけ月日が経っても外つ国に捨てられた内つ者を見つけては顔を確認しています。

妻と子ではないかと確認していたのでしょうか。

他の黒の子とは違ってせんせには使命がない。

ただただ時間が過ぎていくだけの毎日。

7年は長すぎます。

そんな暗闇の中を彷徨っている状態だったせんせの前に現れたシーヴァ。

せんせには希望の光だったんです。

守りたかったシーヴァが黒の子だとは他の外の者から聞いていたせんせだったが、自分の魂を奪った張本人。

せんせの怒りたくもなります。

せんせを黒の子にした理由を本人が「わからない」と言うのです。

魂が欲しかったのなら魂だけ奪えばいいものをアルベルトを黒の子にした。

せんせは黒の子にされていなければ死ぬことができたのに、黒の子のせいで一生死ねない体にさせられ、元居た国から忌み嫌われる存在となり、さらには人を殺してしまった。

シーヴァがたとえ黒の子だったとしても守るとすでに決めていましたが、追い打ちをかけるような真実。

大切に思っている人が実は一番憎い相手だった。

殺すに殺せないじゃないですか。大切な存在になってしまったんですから…。

せんせがどう折り合い付けるのか。

 

魂を奪うと性別も変わるし、性格も全く違う存在になるんですね。

シーヴァが元は黒の子なのに呪われてしまったのは、魂を持っていたからということでしょう。

やはりせんせが何故シーヴァに魂を渡すことができたのかよく分からない。黒の子はせんせの魂を全て奪ってはいなかったということでしょうか。

 

 

 

 

 



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