感想『違国日記』ヤマシタトモコ 5巻

ヒューマンドラマ

※ネタバレあります。ご注意ください。

あらすじ

えみりの母、美知子が槙生に会いたがっていたので朝とえみり、槙生と美知子の4人でファミレスに来ていた。

美知子はえみりから聞かされているので今は槙生がどういった人か知っているが、朝の両親が亡くなってすぐの頃は卒業式にも入学式にも出席しない槙生に対し不信感を抱いていた。

槙生は絶縁状態だった姉のことを美知子に尋ねる。

姉が結婚せずに内縁関係だったことを姉が亡くなった時に知った槙生。

しかし、美知子もニュースで知ったという。

自分にも他人にも厳しかった姉が、”ふつう”から外れることをとても嫌っていた姉が、まさか結婚していなかったとは。

しかし亡くなってしまった以上、誰にも姉のことは分からない。

美知子は槙生が朝の親になったと言うが、槙生は親になるつもりはないと答える。

朝の親は亡くなった両親でしかなくて、本当なら朝が両親から貰えるはずだったものは槙生には与えられない。

朝のことを守ることはできても育てることはできない。

美知子は槙生の言葉を聞き自分が死んでしまったらと想像してしまい涙目になるのだった。

朝が友人とファミレスに行ってきた帰り、玄関で槙生と笠町の会話を立ち聞きし朝宛てに書いた母の日記があることを知る。

槙生が不在の夜、朝は槙生の部屋に入って日記を見つけた。

しかし、日記に書いてあることが本当のことだなんて分からない。

自分のことを想っていたかどうかなんて分からない。

朝は両親の死を受け入れ始めていく。

感想

朝は人からの好意に対して躊躇いがない。

だから、誰から見ても両親から愛されていたということは分かります。

一方で姉が”ふつう”であり続けるために朝を生んだのかとも思ってしまいました。

でも、実際はどんなことを考えていたのかは本人にしか分からない。

日記に書いてあることは真実ではないかもしれない。

それでも文章を書くことをしてこなかった母が日記を書いて朝に渡そうとしていた。

これは母のただの自己満足ではないはず。

朝の母、槙生の姉はみんなと違うことをせずに”ふつう”を演じ続け、しかも周りよりも優秀だと思っていた。

なのに、姉は同級生の中で一番最後まで売れ残り、挙句の果てに結婚ではなく内縁という結果になってしまった。

姉にとっては疑問しか生まれない。

自分が周りとは同じではない、変な部類に入ってしまったのだ。

そして自分で自分に”どうしてこんなこともできないの”と問いかけます。

周りと違うことはとても不安で、なんで自分だけがと悩むことも多いです。

姉のように周りと同じことをし続けるのが良いのか、槙生のように自分を貫いていくのが良いのか。

一長一短だとは思います。

本人が生きづらいと感じなければどんな風に生きてもいいと思いますが、他人に押し付けるのだけはやってはいけないですよね。

毎回思うのですが極端な姉妹だなぁと思います。

この日記を読んで、朝は母の心の中を垣間見るのです。

母がどんな人なのか知りたかったけど、日記を読んだとしてもどんな人だったかなんてわかりようがない。

そして、知りたくてももう母はいない。

母は死んでしまったのです。

日記に書いてあることが本当かなんて分からないと、むしゃくしゃして何もかもが気にいらなくなります。

槙生はそんな不安定な朝にも上辺の言葉を全くかけません。

朝が安心するような言葉を知っているはずなのに、それを言うことを決してしない。

それすら朝には理解できない。

槙生は自分の感情は自分だけのもので、誰にも分かり合えるものではないと言う。

でも朝は自分の感情を一人で抱えることができない。

どう扱っていいのか全く分からないのです。

朝はとうとう両親が亡くなったという現実を見始めました。

泣き出した朝に、槙生は静かに寄り添います。

朝は両親を亡くしてしまし、無条件に何かをしてくれる人達を失いました。

親が亡くなった悲しみを私は想像することしかできないのですが、朝がこれからどうやって自分の感情を整理していくのか気になりますね。

 

それにしても子を持つ親を本当に尊敬します。

育てるって愛する子の為ではありますが大変なことばかりの筈、変な意味ではなく本当に偉業だと思います。

えみりの母、美知子も結婚する前と後で自分が違う人みたいだと言っているので、母になるときは子どもが生まれた瞬間に突然になるでしょうか。

今回もいろいろ考えてしまった巻でした。

 

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