※ネタバレあります。ご注意ください。
作品について
タイトル | xxxHOLiC |
作者 | CLAMP |
連載期間 | 2003年~2010年 |
ジャンル | ダークファンタジー |
あらすじ
四月一日君尋、彼は妖が視えてしまう体質で幼い頃から妖に付き纏われて困っていた。
今日も外に出るなり大量の妖に付き纏われ、彼は苛立ちが収まらない。
しかし彼がどこかの壁に手を着いた瞬間、一瞬で妖が消えたのだ。
不思議に思って敷地内を覗くとそこには不思議な洋館があった。
建物に圧倒されていると、何かに引っ張られるように身体が敷地内に入っていこうとする。
慌てる四月一日だったが身体はどんどん中に入っていき玄関が勝手に開いた。
玄関で二人の女の子に出迎えられ、そのまま手を掴まれて中へ案内されてしまう。
何が何だか分からないまま案内された部屋には一人の女性が煙管をふかしていた。
ここはそれ相応の対価を支払えば願いを叶える店。
妖が視えなくなればいいと願った四月一日は不本意ながら願いの対価としてこの店でアルバイトをすることになった。
主な登場人物
〇四月一日君尋
妖が視える青年。
妖が視えなくなりたいという願いを叶える為、侑子の店で働くことになる。
幼い頃に両親を亡くし、今はアパートで独り暮らしをしている。
家事全般が得意で世話好き。
〇壱原侑子
願いを叶える店の店主。
お酒が大好きでいつも煙管をふかしている。
同じ服を二度着ることはない。
〇百目鬼静
四月一日の同級生で寺の息子。
表情の変わらない青年。
妖を寄せ付けず払うことができ、稀に見る清い気を持っている。
〇久軒ひまわり
四月一日の同級生の女の子。
いつも笑顔を絶やさない。
生まれながらに特殊な体質を持っている。
〇五月七日小羽
妖が視える女の子。
両親は離婚し母親と2人暮らし。
四月一日ととても近い存在。
〇マル/モロ
正式な名前はマルダシとモロダシ。
侑子が作ったもので魂が無く、店の敷地外へ出ることができない。
〇モコナ=モドキ
侑子とクロウ・リードという魔術師の二人で作った饅頭のような生き物。
黒色と白色のモコナ=モドキがおり、白色の方は漫画『ツバサ』の方に登場する。
黒色は妖を見ることができ、侑子同様に大の酒好き。
感想
妖や店に来るお客の奇々怪々な出来事を四月一日が日々体験して成長していく物語です。
「この世に偶然はない、あるのは必然だけ」
店主の侑子が言うセリフです。起こることすべてに意味がある。
そんなことを考えながら毎日を過ごすのはとても大変ですが、”何故”と考えることに意味があるというのです。
四月一日は侑子と出会い様々な出来事を通して成長していきます。
そして周りの人も四月一日と過ごす中で様々なことを選んで変わっていきます。
9巻ぐらいまでは不思議な出来事を中心に描かれていますが、後半は四月一日や侑子の真実に迫っていきます。
この漫画の問題は2つ。
1つ目は前半はホリックだけ読んでも問題ないのですが、後半はツバサという漫画を読まなければ四月一日や侑子のことが分かりません。
ツバサのこと知っている前提でツバサの登場人物が出てきて喋ります。
2つ目はホリックは19巻で終わっていますが、謎のままになっているものも。
若干もやもやのまま終わってしまっている漫画です。(続編をずっと待っています…)
そんな漫画で何が面白いかと言えば人は妖なんかよりもおっかいという話が多いこと。
明るい話はほぼありません。
客が悲惨な目にあることもしばしばあります。
オカルトやホラーが好きな人にお勧めの漫画です。
そして侑子さんの服装。
彼女は同じ服を二回着ることはほぼありません。
侑子さんの服は本当に個性的で、どこに売っているのだろう?と思う服が多い。
スタイルが良すぎて何を着ても様になる。
長い髪を個性的な髪型にしていることも多いです。
物語前半
嘘をつく癖が辞められない女性。
ネットが辞められない主婦。
自分を過信した女性。
言葉に縛られている女性。
色々な願いや悩みを持った客が対価を払って願いを叶えます。
対価はお金ではなく、願いに見合った物や事柄だったりと様々。
何の代償もなしに願いが叶うことはなく、願いを叶えるために”何でもする”なんて言ってしまった時には恐ろしいことになります。
人間ほど恐ろしいものはいない
“猿の手”を手に入れ自分を過信し貪欲に願いを叶え続けた女性の話があります。
最後は「私の前から全てを消して」という願いを猿の手が女性を殺すことで叶えました。
猿の手は万能でなく”雨を降らしてほしい”と願えばプールの水か消えるなど、どこかで帳尻を合わせているのです。
それに彼女は気が付かず、止めるように言っても”自分は強運だから”と過信し、結果として死んでしまいました。
気が付いた時には手遅れになっていて、終わったころには何も残らない。
怖い話です。
学校でエンジェルさん(こっくりさん)が流行り、本当に変な出来事が起きてしまった話も面白いです。
生徒たちが面白半分でエンジェルさんを行っていたら、”怖いモノがこればいい””変なコトが起こればいい”など沢山の生徒たちの悪気のない邪気が集まって本当に変なコトが起こってしまった。
人は怖いことが自分だけには降りかからないといつもどこかで思っていて、”人が死んだらもっと面白いのに”とどんどんエスカレートしてしまう。
こういうのは子どもやネット上だと特に顕著ですよね。
心があって言葉を交わすことができるからこそ人間は素晴らしいし恐ろしい生き物。
自分を縛るのも自分次第だなぁと思います。
他人から何を言われても自分が変わろうと思わないと変われないし、傍から見て不幸だと思っても自分がそれを望んでいるのなら仕方がない。
人間とは面倒くさい生き物です。
人の都合に振り回されるモノ達
座敷童、雨童女、狐、女郎蜘蛛、人間以外にも色んなモノが登場します。
現代社会は昔と違って人でないものが生きづらい世界になってしまいました。
座敷童は清い気のある場所でしか生きられず、山奥でしか生活できません。
昔と違って妖を見る人も減り、清い気を持つ人間も減っているという。
妖が視えない人に妖を説明するのは難しいし、妖が視える人でも力の大小がある。
見えないからといって無いとは限りません。
私には視えませんが”無い”とは限りませんね。いると思うととても怖いですが…。
人との出会いで変わっていく四月一日
四月一日はとても優しい子ですが、自己犠牲が強すぎます。
自分が傷つくことで大切な人が傷つくことに気が付かない。
百目鬼が蜘蛛の恨みを買って片目が開かなくなった時、四月一日は蜘蛛の巣に引っ掛かった自分のせいだと侑子から百目鬼の目を開く方法を教えてもらいました。
相談もなしに勝手に自分の目を犠牲にした四月一日に対して百目鬼は怒ります。
そして、力のある四月一日の目が妖の世界で奪い合いになり、清い気でないと生きられない座敷童が四月一日の目を取り返すために女郎蜘蛛の所へ行き囚われてしまう。
座敷童を助ける為に、片目だけでダメなら両目も、さらには腕も捧げようとする四月一日に女郎蜘蛛は
座敷童がこんなにまで貴方の目を取り返そうとしているのに貴方はそれを平気で捨てる。
つまり、この子は貴方がゴミみたいに扱うモノを守ろうとする愚かモノだと思っているのね。
xxxHOLiC 9巻
座敷童も百目鬼も四月一日のことを大切に思っている。
四月一日は自分が傷つけば彼らが傷つくことに気が付かなった。
この出来事から四月一日は少しずつ変わっていきます。
物語後半
四月一日が少しずつ変わっていき、侑子や四月一日の謎だけでなく、小羽やひまわりのことも明らかになっていく後半。
1,2巻で登場した『ツバサ』のキャラクターも登場し、ツバサを読まないと分からない話も出てきます。
四月一日はツバサに登場する『小狼』ととても深い関係があるのでツバサの物語とは切っても切れません。
小羽の願い
四月一日と同じぐらい力が強く、苗字も似ている小羽。
彼女は霊能師として多くのテレビに主演していました。
人気だった小羽でしたがある番組で”嘘を言った”と嫌われはじめます。
自宅の壁に”インチキ霊能師の家”と落書きをされ、小羽は階段から突き落とされ怪我をしてしまう。
そんな状態でも小羽は無表情で大丈夫だと言うのです。
でも四月一日は大丈夫じゃないと小羽を助けようと行動します。
小羽がどれだけ周囲から嫌われてもテレビ出演を辞めなかったのは母親のためだったんです。
離婚した母親は元夫へ復讐するため小羽をテレビに出させてました。
小羽の力が弱くならないように精進料理しか食べさせず、誰にも小羽に触れさせず、母親である自分ですら小羽の名前を呼ばず触れようともしない。
小羽はそんな母親が幸せになれるようにと願い続けましたが、母親は追い詰められ何も変わらず事態は悪化する一方でした。
そんな状況でも小羽では終わらせられなくて、きっかけを待っていました。
そのきっかけが四月一日だったのです。
小羽は侑子に幸せになるための対価を払い、母親と共に少しずつ進んでいきます。
人の不幸を願うのならその願いの強さの分自分も不幸になる。
自分が不幸だと思っている人は誰かを恨んで誰かの不幸を願っている。
人の不幸は蜜の味とは言いますが行き過ぎるとどうにもならないくらいに自分が不幸になってしまう。
不幸でしか蜜を味わえないのは残念というか可哀そうというか。
復讐なんてやるものではないですね。
ひまわりの特殊な体質
ひまわりとばったり会った後に交通事故を目撃してしまった。
ひまわりから頼まれたエンジェルさんのことで死にそうになってしまった。
ひまわりと指切りをしたら小指が痛み、死体を見てしまった。
これは偶然ではなく、ひまわりが持つ”他人を不幸にしてしまう”体質のせいでした。
学校で後ろから肩をぽんとたたかれ、その肩が窓ガラスに触れた瞬間にガラスが外れて落ちてしまった四月一日。
あと少しで死んでしまうところでしたが、一命を取り留めた四月一日は目を覚まします。
侑子の店で四月一日がひまわりにひまわりと会うと偶に良くないことが起こっていたと伝えます。
その言葉にひまわりは「やっと気づいた?」と満面の笑みで答えました。
気が付いた四月一日にさようならと去っていこうとするひまわりでしたが、四月一日はいつも通り接します。
ひまわりと過ごすことで次は死ぬかもしれない、けど、四月一日はひまわりの笑顔が好きだし、一緒に過ごすととても幸せを感じるのです。
四月一日はひまわりに出会えて本当に幸せだと、笑顔で応えました。
ひまわりの体質を治すには相当の対価を払わないといけない。
自分で対価を払ってひまわりの体質を治そうと考えた四月一日ですが、自分が傷つけばひまわりが悲しむと考えられるようになりました。
自分がひまわりにできることをするのだと決意します。
存在自体があり得ない四月一日君尋
ツバサの登場人物、『小狼』がサクラを助ける為に時間を巻き戻したことで産まれた四月一日。
実は1話で初めて侑子の店に来るよりももっと前に、四月一日は一度侑子の店に来ていました。
四月一日は『小狼』と自分の二つの未来の為に自分の記憶を対価にしていたのです。
四月一日は自分の過去も両親のことも覚えていません。
でも存在するはずのない者である四月一日は記憶が無くなっても「此処に居ちゃいけなんだ」と無意識に思っていた。
『小狼』が独りでいるのなら、自分も独りでいないといけない。
『小狼』が命の危険にさらされているのなら、代わりに自分が死なないといけない。
四月一日は無意識に『小狼』を助けるような行動を取っていたのです。
しかし『小狼』も四月一日に何かあった時の対価を侑子に払っていました。
「消えるな」と『小狼』は四月一日に伝えます。
そして四月一日は侑子と出会い、百目鬼やひまわり、小羽達にも出会い「此処に居たい」と思えるようになりました。
四月一日は自分を大切に思えるようになったのです。
ホリックだけを読んでいたら意味の分からない設定です。
主人公の謎が違う漫画を読まなければ分からない。
でも漫画を超えた設定という点は面白いですね。
全ての始まりの原因だった侑子と四月一日の選択
侑子は第1話の時点ですでに死んでいます。
侑子が死ぬ瞬間、クロウ・リードが「目を開けてほしい」と願っただけで侑子は完全に死ぬことができなくなりました。
そして『小狼』がサクラを助けたことで時が動き出し侑子は本当に死んでしまいます。
四月一日からしたら突然すぎて訳が分かりません。
大切な人である侑子が実はすでに死んでいた、という衝撃事実。
それでも四月一日は店を継いで侑子を待つ、という選択をしました。
侑子と別れる時、四月一日はずっと願っていた妖を視えなくするという選択もできましたが、侑子を待つために力をさらに強くすることにしました。
力が強くなったことで年を取ることがなくなり、店から出ることもできなくなりました。
死んでしまった侑子に会える方法があるのかは分かりませんが、四月一日は本当に侑子が大切だった。
百目鬼が死んで、彼のひ孫が四月一日の店に来るようになるぐらいの長い月日を四月一日は店の中で過ごしています。
そしてその月日が店に籠る必要もなくなるほど四月一日の力をさらに強めました。
百年以上経っても四月一日の願いはかなわず、それでも侑子に会うことを願わずにはいられない。
四月一日は百目鬼やひまわり、大切な人達を全員看取って、それでもまだまだ死ぬことはありません。
四月一日は幸せなのでしょうか。
未来は選択によって変わる
人は自分の言葉に縛られていたり、気が付かない癖に縛られています。
それを変えるきっかけは良くも悪くも出会いだけです。
人と出会い、自分で変わろうと思えばどんな風にも変われます。
妖が視えなくなればいいと願ったはずの四月一日は、強い力をもつ術者となりました。
自己犠牲が強く、自分はいてはいけないと思っていた彼が出会いによってここに居たいと思うようになり、大切な人をずっと待つという選択をし気が付けば百年以上の月日が経ってしまいました。
四月一日が最終話で幸せにはなれませんでしたが、侑子を待つことを諦めることはないのでいつか出会えることを祈ります。